三カ月くらい前から、週一で二時間、ビジネス英会話を習っています。
先生は日本語のわからないアメリカ人男性です。
毎回、会うたびに「ハロー、ミスターハナビ! ハワユドゥーイントゥデイ!」と声をかけてくるんだけど、これが苦手。
トゥデイと言われても、別になんも変わったことないし、「アイムファーイン」くらいで、その次に継ぐ言葉も出ない。
四人で一クラスなんだけど、ほかの三人が欠席で1on1レッスンになったとき、「今日のレッスンはエニシングユーワント」と言われて、挨拶のたびに困るからどうしたらいいか教えてほしいと頼んだ。
「オーウ、スモールトーク! 初級クラスで最初にやることだけど、おまえはそこがやりたかったのかー!」
スモールトーク! そんな言葉を聞いたのも初めてだ。
トークにスモールもビッグもないと思ってたわ。
んで、スモールトーク。テーマは(うろ覚えだけど)天気、ニュース、健康状態や服装、スポーツの結果、家族の様子、食べたもの、仕事の調子の8つで、返事をする側も、あたりさわりのないものに限られるという。
そしてその会話のキャッチボールは、お互い交互に積み木を重ねるように、育んでいかなければならないというのがルールだ。ゲームのようなものだと言った。
A:今日はちょっと寒いね
B:寒いね
これはNG。YES・NOだけで返したら共同作業は終わってしまい、失礼だというのだ。
また、一方が尋ねてきたら、答えた後、同じようにこちらも尋ねなければならない。
「人はだれでも自分のことを話すと気持ちがいいだろう? だからマナーとして、相手にも訊くんだよ」
あからさまに言われ、かなり衝撃的だった。
僕は自分のことを話すのが気持ちいいとか、思ったこともない。
A:今日はちょっと寒いね
B:ああ、風が強いね。明日はもっと寒いらしいね
A:そうなのかい? そろそろコートを出さなきゃならないかな?
B:出したほうがいいね。俺も今夜用意するとしよう。
A:君のコートはどんなタイプだい?
B:赤くて短いタイプのものだよ。君のは?
A:僕のは黒のトレンチコートだよ
B:それはきっとかっこいいだろうね、俺もそれが欲しいよ
みたいに、『共同作業』で『どうでもいいこと』を『交互に口にする』というのがルールなんだって。
そしてテーマはあちこちにいきなり飛んだりしてはいけない。天気の話しから、家族の話しに飛んではいけない。飛ぶ場合は、かなり洗練されたトーク技術が必要になるという。それができなければ失礼に当たり、相手の心証をわるくするのだと。
他の人はどうだかわからないけど、僕の感覚ではそんな、最初からどうでもいいような話題を振るのは相手に失礼だという気がしたりする。
それに、健康や家族や食べたものだとか、気心の知れない相手にやすやすと話すようなことでもないと思う。
しかしひとたびまじめな日本人が、「父は昨日から寝込んでいて、熱が39度もあって、大変なんです」などと答えてしまったら、それはスモールトークにならないから、ゲームオーバー。
訊く方も、話す方も、スモールトークという儀礼を行っている、という認識と主体性を持たなければならないと。
あと、つまらないことでも大げさにリアクションを取ることが、このゲームを進める上で重要なのだと。「ふうん(Hmmm)」ってのは日本語だからダメなんだって。
日本人の感覚では理解しにくいのはわかるが、これは文化!
相槌は、ウォウ! とか アーハー! とか言えとのこと。
こんなにあからさまに、「アメリカ人はまず、どうでもいいやりとりをする」と言い切る先生に出会えたことは、本当に良かったと思う。
「ファーインセンキューアンドユー?」
「アイムベリーファーイン。」~~~に続ける例文をいくつか頭に入れておけば、格段にスムーズな人間関係ができるわけだね。ただの儀礼なら、自分で何を話すか考える必要もない。
意味なんてない。
それでおっけーだと。
偶然、先生がキックボクシングファンだということを知ったので、後楽園ホールの試合に招待しました。今夜は僕と先生と細君の3人で並んで応援してきます。
教室ではない。
友人としてのスモールトーク、やってみるよ☆
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スモールトーク
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