細君が「ちょっと見て欲しいのがあるんだけど・・・」と呼ぶので行ってみると、フリー求人誌だった。
細君は某自動車会社本社ビルの社員食堂で、スタートアップからのパートとして、8年ほど勤めており、一番の古株となっている。(自動車会社のパートではなく、そこが契約しているフードサービスのパート)
去年の緊急事態宣言下では、他のパートさんたちは全員がほとんど自宅待機。社員さん達も数人しか出社していないのに、細君一人だけが通常出勤。
それなのに他のパートさん達の休業補助金?より、時短作業の細君の手取りの方がが少なかったそうな。
時給もたいして上がらず、しかもリモートワークの社員が増えているから仕事量も減っていき、モチベーションがだだ下がりなのだ。
ここ1年近く、暇さえあれば求人誌をめくっている。
お、ついにいい仕事見つけたか!! と、細君の指差す欄を見るが、字が細かくて読むのがめんどくさい。
とりあえず、読むのがめんどくさかったので、
「近くならいいんじゃない?」と言ってみたところ、「遠いよ」と言う。
俺: は???
細: 北海道。
俺: へ?
細: 住み込みで農業の手伝いを募集しているから、やってみたい。だめ?
俺: だめに決まってるだろ〜。
ちょうどそのタイミングで、会社から修正依頼の電話があったので、とりあえずその場を離れる。
うーむ・・・。どうしたものか。
実は昔から細君は、田舎で自給自足生活がしたいという夢を語っていた。
子どもたちに相談するか?
仕事がひと段落ついたので、細君のところに戻り、とりあえずそのページを見てみることにした。
細: どうしてもダメかな?
俺: ダメだよ。俺が困る。
細: ぜんぜん困らないでしょ。
(ここ数日、ほとんど細君の手料理を食べてなかったことを思い出す。あ、サンドイッチとかは作ってもらってたが。張り合いがないのかも・・・)
俺: 北海道に行かれたら、俺は仕事しないと思うよ。一緒に食っていくため働いてんだから。
細: それは困る・・・。じゃあ、また探さなきゃ。
俺: まあ、俺が死んだら好きにしてくれ。
細: 私の方が先に死ぬと思うけど。
俺: それはわからん。早く死ぬように祈ってて。
細: ・・・。